1-2 幹線道路にある東京の史跡へ2012/10/09 01:03

<目次(リンク)>
 1.真夏の日本橋を出発
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2012/10/09/6597410
 2.幹線道路にある東京の史跡へ
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2012/10/09/6597409
 3.最初の宿場、品川宿へ
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2012/10/09/6597402
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2.幹線道路にある東京の史跡へ

 東海道は、品川の八つ山(品川宿)まで現在の国道15号線(第一京浜)となる。このため、特に見所のない、両側にビルの建ち並ぶ”大通り”を歩くことになる。先ほどから東海道と表現しているが、正確には田町の先にある”高輪大木戸”を過ぎるまでは”江戸の内”と呼ばれ、町の中となる。この”大木戸”から先が、いわゆる”街道”としての東海道になる。

 さて、旅人二人は、広い通りをひたすら進む。新橋から浜松町の間は、オフィスのビルが建ち並び、日曜日ともなると人通りも交通量も少ない。銀座の人混みがうそのようである。左側には東海道新幹線、東海道線などの鉄道が行き交っており、鉄道と国道15号線の間には、いくつかの小さな道がある。これら小さな道沿いには、寺があることから、確かに国道15号はかつての街道であった証ともいえる。
 この辺りはビルが多いためか、比較的日陰も多く真夏の日差しを遮ってくれている。休憩もしたことから、二人の足は少し軽やかである。
【き】「なあ、おさべえ。」
【お】「あん?」
【き】「ビルばかりでつまらんなー。」
【お】「まあ、しょうがないさ。このあたりはオフィスが中心なのだから。」
【き】「そりゃそうだけど、何か発見があってもいいんじゃないかな。」
【お】「まあまあ、始まったばかりだ。発見はこれからだよ。それにしても、ビルがたくさんあるな。テナントが入っているのだから、どれほどの会社がここだけであるのやら。」
あらためて、東京という都市の大きさを感じるおさべえであった。

 やがて、大門の交差点に付く。右側には増上寺と東京タワーが、左側には浜松町の駅と世界貿易センターのビルがみえる。このあたりは、少し開けているせいか、空からは夏の日差しがそそぐ。
【き】「おお、大門だ。ようやく”歴史的なもの”に出会ったよ。」
そう言うのはきんのじ。ビルばかりの景色に退屈していたところに、寺と電波塔、そしてビルといった、ここだけでしか味わえない景色に、退屈な気持ちが癒されたらしい。
【お】「あの門の先、増上寺と東京タワーを入れて写真を撮る人は多いな。確かに、ここでしか味わえない、東京の絶景ポイントかもしれないな。」
 言い忘れたが、この二人は東京都港区在住。つまり、増上寺と東京タワーは、二人にとって珍しいものではない。が、普段見慣れている景色も、”東海道という街道から見た景色”になると、違った印象を受ける。これだから、歩きはおもしろい。
【き】「よっていくか?」
きんのじは言う。
【お】「そうさな。ちょっと折角だから寄っていくか。」
とおさべえも続く。

 二人は、大門の交差点で東海道からそれ、増上寺へ向かう。ここまで、人工物が中心の景色であったが、寺の境内は自然が多い。セミの鳴き声でかなり賑やかな境内には、港区の、いや、東京の観光スポットだけに人も多い。木陰で涼む二人の目の前には、増上寺の本堂と東京タワーが、夏の日差しを浴びて輝いていた。
【き】「やっぱり広いな。こうやってまじまじと見ると、この寺は本当に大きい。」
きんのじは、本堂を見ながら言った。
【き】「浅草の浅草寺も立派だが、この増上寺だって負けちゃいないな。そう思わないか?おさべえ。」
【お】「ああ、ここは徳川家のお墓もある由緒ある寺だ。しかも”江戸の内”にある。その重みは浅草寺なんてもんじゃないよ。」
なぜか、浅草寺に対抗意識を燃やす二人であった。
【お】「さあ、先へすすもう。」
先ほどよりも元気になったおさべえが先導で、再び東海道に戻る。大門の交差点から品川方面へ、再びビルの間を進む。やがて人通りも増え、賑やかになってきた。そろそろ田町駅前である。
【き】「田町駅か。ここは駅前の通りなので、やっぱり賑やかだな。」
きんのじは言う。
【お】「まあね。地図を見ると、この先に札の辻があり、その先に大木戸跡があるぞ。」
【き】「なるほど、いよいよ江戸を出るか。」

 田町の駅前を越えると、直ぐに札の辻の交差点に出る。札の辻とは、簡単に言えば、江戸への正面入口にあたる。札の辻という由来は、ここに高札場が設けられていて、布告法令などが掲示されていたことによる。現在は、交通量の多い交差点であるが、江戸時代には重要な場所であった。
 札の辻の交差点を過ぎると、いよいよ「高輪大木戸跡」である。交差点を越えてしばらく進むと、歩道に乗り出すように石垣が目に入ってくる。
【き】「ん、あの石垣はなんだ。城門跡か。」
【お】「きんのじ、あれこそが”高輪大木戸跡”だよ。ここまでが”江戸”で、あの大木戸跡の先からが、街道としての東海道になるとゆーわけだよ。」
【き】「なるほど。」
【お】「ん、説明版があるぞ。」
【き】「どれそれ、なんて書いてあるんだ、おさべえ。」
【お】「えっと、この大木戸が江戸への入り口と書いてあるな。今は都内有数の史跡のようだ。当時はここに、城門みたいな大きな門があったってわけだ。恐らく、ここで、江戸を出入りする人を取り締まっていたのだろう。」
【き】「日本橋からここまで、江戸という町は相当広かったようだ。家康さんはすごいな。」
あらためて、家康の偉大さを感じるきんのじであった。
【お】「きんのじ、いよいよ東海道だぞ。この門を出ればそこは江戸の外。最初の宿場、品川を目指そう。」


--1章3節へ続く--

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