5-3 大山道道標、そして戸塚宿へ2013/06/25 14:43

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 1.いよいよ権太坂を超える
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2013/06/25/6876448
 2.品濃一里塚を越えて西へ
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2013/06/25/6876449
 3.大山道道標、そして戸塚宿へ
  http://o-chan.asablo.jp/blog/2013/06/25/6876450
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3.大山道道標、そして戸塚宿へ
 日が傾き始めた頃、おさべえときんのじの行く手には巨木が現れた。国道脇の民家に植わっている木のようだが、その大きさに圧倒される。案内板がありモチの巨木であることがわかった。巨木のある家は益田家と記されている。
【き】「おさべえ、ものすごく大きな木があるぞ。」
【お】「どれどれ、本当だ。かなり大きな木だな。何の木だろう。」
【き】「案内板にはモチの木と書いてあるぞ。木の植わっている民家は益田家だそうだ。」
【お】「由緒ある家柄なのだろうか。」
【き】「うーん、あまりピンとこないけどなぁ。とりあえず巨木は見事だということで、先へ進もう。」
あまり興味を示さない旅人だが、日も傾きかけてきたので、先を急ぐことにした。
【お】「ん、きんのじ。対岸になにか社のようなものがあるぞ。」
【き】「どれどれ、本当だ。行ってみよう。」
モチの巨木のある益田家とは反対側に側道があるが、そこに社のようなものをおさべえは発見した。早速信号を渡り反対側へ行ってみることにした。
側道を入ると、そこには石碑やら社やら、立派な史跡が建っていた。よく見ると「大山道」という文字が見えることから、道標のようである。
【お】「きんのじ、これは大山道の道標だな。」
【き】「本当だ。ということは、この側道は大山道か。」
【お】「ここから大山の阿夫利神社まで通じているわけだな。一度は行ってみたいものだな。」
【き】「よし、じゃあ今から行こう。」
【お】「本気かい?」
【き】「冗談さ。」
【お】「やっぱりね。」
大山道は、大山にある阿夫利神社への参拝道の総称である。江戸時代、大山への参拝といえば庶民の娯楽の一つでもあった。神奈川県内を通る東海道からは、特に大山道の分岐が多い。やぱり、東海道は最も往来の多い道であったためだと思われる。
【お】「それにしても、大山どはどんなところなのかな。」
【き】「途中まで階段があるんだよ。伊香保温泉みたいに。階段の左右には店があってさ。登り切るとケーブルカーがあるんだ。そのケーブルカーに乗って途中まで上るわけさ。」
【お】「ん、いやに詳しいな。きんのじ。」
【き】「まあね、一度行ったことがあるからね。」
【お】「なんだ、すでに行っていたのか。」
【き】「結構いいとろこだぞ。今度行ってみな。」
【お】「そうするよ。」
【き】「さて、先を急ごうか。」
【お】「ちょっとまって。写真を撮っていくよ。」
【き】「おお、そうだった。おさべえは証拠写真を撮っているんだったな。思う存分撮ってくれ。」
【お】「証拠写真とは大げさな。」
【き】「それにしても、ここの分岐は立派だねぇ。」
【お】「確かに。鳥居のあった分岐も見事だったけど、ここには社があるしね。」
一通り写真を撮ると、おさべえはきんのじに合図をした。旅人は再び戸塚宿を目指して国道1号線を歩き始めた。益田家を過ぎるとすぐに不動坂の分岐となり、旧東海道は左側の道となる。旧道をしらばく進むと、立派な門構えの民家がある。
【き】「おお、すごく立派な民家だ。」
【お】「民家というよりは酒造みたいなものなのかもしれないな。」
【き】「そのようにも見えるな。」
【お】「これだけ立派な建物なんだから、普通の民家じゃないかもね。」
【き】「気になるけど、日の傾きの方がもっと気になるので、先へ進もう。」
立派な家に興味をひかれつつも、日の傾きが気になる旅人は旧道をあしばやに過ぎ去る。しばらく歩くとT路地にぶつかる。旧東海道は右へ右へ曲がり国道1号線に合流する。再び国道歩きとなる東海道は、夕方でもあるのか、かなり交通量が多い。
【き】「国道か・・・。」
【お】「ん、国道だけど何か?」
【き】「旧道は短かった。はかない旧道の命もつきたか。」
【お】「あん、なんじゃそりゃ。」
【き】「やっぱり国道は苦痛だ。歩道があってもこの交通量。煤煙をすいながらの旅は苦痛でしかない。」
【お】「ああ、いつものぼやきか。国道歩きとなると決まってぼやくな、きんのじは。」
【き】「旧道の楽しみが国道にはないと思わないか。」
【お】「まあ、その気持ちはわかるけどね。でも、ガイドブックを見るとこの先はずっと国道1号線を歩くみたいだぞ。」
【き】「なんと。ゴールは国道1号線か。まるで箱根駅伝のようだ。」
【お】「ん、なんかよくわからないぞ。まあいいや。とにかく先を進もう。戸塚宿までかなり近づいてきたようだから。」
ぼやくきんのじをせかしながら、おさべえは先を急いだ。東海道は国道1号線となり戸塚宿へ向かう。退屈な国道歩きではあったが、しばらくするとファミリーレストランの横に石碑を見付けた。そこには「戸塚宿江戸方見付け」と書かれている。
【お】「きんのじ、江戸方見付け」と書いてあるぞ。」
【き】「おお、やっと戸塚宿だ。いやー、長かった。」
【お】「ここから宿場か。国道1号線なので仕方ないけど、なんとも味気ない宿場入りだな。」
【き】「いやー、本当に。」
【お】「でもまあ、石碑が建っているだけましか。」
【き】「そういうこと。さあ、宿場に入ろう。」
江戸方見付けを過ぎたことで、旅人は戸塚宿に入った。保土ヶ谷宿から権太坂を超えてやってきたのだが、今日のゴールまではまだ先があることを、忘れかけているようである。
【き】「いやー、宿場に着いたぞ。」
【お】「なあ、きんのじ。」
【き】「ん?」
【お】「宿場にはいったけど、まだゴールじゃないからね。」
【き】「おお、そうか。で、今日のゴールはどこだっけ?」
【お】「戸塚駅だね。ちょうど東海道、つまり国道1号線と東海道線が交差しているところが駅なので。」
【き】「なるほどね。じゃあ、まだ先があるってわけか。」
【お】「そういうこと。もう一踏ん張りしよう。」
【き】「そうだな。ゴールさへすれば、あとはうまいビールが待っている。」
【お】「はやくもビールか。」
ゴールという言葉を聞くと、きんのじの頭の中はビールで支配されるようである。

 さて、東海道はこのまま国道1号線を進むことになる。先ほどの不動坂のところで国道1号線はバイパスが分岐しており、戸塚駅前を通る国道1号線の交通量は次第に減ってきている。歩道と車道が分かれている点では、旧道よりも歩きやすいかもしれない。
 江戸方見付けからしばらく進むと一里塚の案内板が建っていた。品濃一里塚から4キロきたことになる。戸塚一里塚は江戸からちょうど10里に位置している。1里約4キロの計算でいくと、ようやく40キロきたことになるのである。
【お】「お、一里塚だ。」
【き】「戸塚一里塚か。あの巨大な品濃一里塚から4キロということになるな。」
【お】「ちなみに、江戸から数えて10里目となるので、40キロきたことになるな。」
【き】「40キロか。ずいぶんきたように思えるけどさ、京都までは約500キロだろ。まだまだ先は長いなぁ。」
【お】「まあね。4キロ歩いただけでもずいぶんきたなぁと思うくらいだからね。」
【き】「そうか。あと何回ビールが飲めるんだろう。ゴールする回数だけ飲めるというわけか。」
【お】「おいおい、ビールかい。」
【き】「そうさ。ビールは大切なガソリンだからね。」
【お】「へいへい。でもまあ、まだまだ楽しめるってわけだよ。」
戸塚一里塚を過ぎるとしばらく史跡のない区間が続く。やがて前方に橋が見えてきた。近づくと「吉田大橋」と書かれている。
【き】「吉田大橋か。大橋の割には小さいな。」
【お】「いやいや、このあたりでは比較的大きい橋なんだよ。」
【き】「前方は東海道線か。踏切があるぞ。」
【お】「この橋を渡ると戸塚の踏切。つまり戸塚駅だよ。」
【き】「やったぞ。今日のゴールだ、ビールが待っている。」
おさべえは苦笑いをしながら、先導して橋を渡った。きんのじもおさべえについて橋を渡った。橋を渡り終えると目前に踏切が現れる。東海道線と横須賀線の踏切であり、左側は戸塚駅である。
戸塚宿は、駅のすぐ横を通っている国道1号線上となるため、鉄道の駅から最も近い宿場とえいるのではないだろうか。そんな宿場の中心部が、現在の戸塚駅周辺のようである。
【お】「踏切をわたり終えたぞ。今日はここまでにしよう。」
【き】「本陣の案内はなさそうだな。」
【お】「ガイドブックによるともう少し先にあるみたいだよ。」
【き】「なるほど。本陣はもう少し先か。まあ、今日はここまでにするか。」
【お】「そうだね。きんのじもビールを飲みたそうだし、駅前でもあるので、ここを今回の終了地点としようか。」
【き】「ご苦労さん。」
どうやら、旅人は戸塚駅前で今回の旅を終えたようである。権太坂を超える今回の行程は、二人にとって少し長く感じたようである。終了地点の写真を撮り、二人はビールの待つ東京都内へ向けて、戸塚駅から電車に乗った。


第六章へ続く

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